■2016年3月13日 尾張旭市 主催者:映画「風は生きよという」尾張旭実行委員会
愛知県尾張旭市で上映会を主催してくださったのは、ご自身も人工呼吸器を使用されている押富俊恵さん。押富さんが上映会のはじまりになされたご挨拶の一文を、紹介させて頂きます。
○実行委員長あいさつ○
本日3月13日、愛知県で初上映となります、映画「風は生きよという」をこの尾張旭市で開催することができました。ご覧のように私自身も地域で生活をする人工呼吸器ユーザーです。(中略)
これだけの方がこの映画を観るためにここまで来てくださったというのは、大きな一歩だと私は思っています。大きな前進です。もしかして今は元気でも、みなさんも人工呼吸器をつけるかどうか迫られる時がくるかもしれません。でも、今現在、医療現場で与えられる情報は「人工呼吸器をつけるか?つけないか?」の2択が多いのが実情です。つけた後の生活について詳しい説明を受けることは少ないように感じています。私自身が「在宅生活をする」と決めた時は、どんな暮らしが待っているのかについての説明は全くありませんでした。だから呼吸器をつけたまま遊びに行けるなんて考えてもみませんでした。だけど本当は人工呼吸器をつけたらどんな生活になるのかを知らされるべきだと私は思っています。
人工呼吸器をつけたら… 「生きている意味がない」「生かされてるだけ」「家族に迷惑がかかる」「死んでしまいたい」「生きていく自信がない」など…そんなネガティブな理由で、生きるのをやめないでほしい。「人工呼吸器をつけていても普通に楽しい人生を送ること」だって自分次第では可能です。
それは、障害者自身だけの問題ではなく受け入れるために「社会」がどう変わるのか?どのように支えるのか?そこが問題のひとつだと私は思っています。患者やその家族などの個人だけで解決できるような問題ではなく、社会全体の問題として扱うべきではないのかなと思うのです。
私は、障害を持っていてもそうでなくても、誰もが地域で暮らすことを選択できる当たり前な社会が理想です。「障害があっても地域で暮らす」ことが特別だと取り上げられるような社会ではなく、それが当たり前であるべきです。現在は、不自由ながらも楽しく生活しています。
NPO法人という、次のアクションも起こそうとしている最中です。NPO法人名前は、「ピース・トレランス」という名前にしました。「平和」と「寛容」という意味です。「みんな許しあって、寛容で幸せな世の中になろうよ」という気持ちを込めて決めました。(中略)
最後になりましたが、本日はたくさんの方に遠方からも足を運んでいただき感謝申し上げます。本当にありがとうございます。私が話していても仕方ないですので、そろそろ上映を始めたいと思います。それでは、この映画がみなさんの気持ちを少しでも変える「きっかけ」になることを期待して開始したいと思います。ありがとうございました。
2016年3月13日(日)
映画「風は生きよという」尾張旭実行委員会
実行委員長 押富俊恵
・ごく普通に会話する障害者と支援者・淡々とした語りのナレーション、わざとらしさが少しもない映画の持つ大きな力を感じました。多くの人に見てほしいと思います。
・呼吸器をつけた厳しい障害の中笑顔と共に支援者と共にすごされてる方々を拝見し励まされました。ありがとうございました。
・スタッフさん、みなさん笑顔で迎えてくださってとても地域のつながりが「こんな風だったら生きやすい」だろうと感じました。この様な空気感が一番大切だと思います。みんなつなぎ合い認め合いそれが「ふつう」になるように私たち家族も社会を変える一歩を進んでいこうと思います。まさに人工呼吸器の風は人と人をつなぐものだと感じています。
・子供達(6歳・9歳)が興味を持って静かに見ていました。良い刺激になったと思います。
・人工呼吸器に対してのイメージが変わりとても良かったです。地域生活に介助等いろいろ考えさせられました。
・「地域で生活する」ことへの支援をするにあたって、「地域生活」へのイメージが持てました。人工呼吸器をつけているか・いないかに関わらず、生活者であることに何も変わらないのだと感じました。ずっと考え続けていきます。
・この映画を見て障害を持った方のイメージがかなり変わりました。自分も福祉の仕事をしていて、色々と知りたい気持ちやしてあげられる事をやりたい気持ちがさらに大きくなりました。今日はとてもいい経験ができました。ありがとうございました。
・重度の障害を持つ方の気持ちがとてもよく分かったと思います。テレビ等で観るよりもずっと率直な気持ちを知ることができました。このような映画を観ることができて本当によかったです。
・今回この映画を見させて頂いて私自身の考えが大きく変わりました。この機会を与えて下さいましてありがとうございました。
・「風」が何を意味するのかもわからなかった私。本当にものすごく重い障害を背負いながら普通にしかも楽しい人生を送ろうと生きていくユーザーの方々、言葉では表現できない家族の愛・努力・支え。今健常者も将来は皆障害と向きあうことになります。風、鈴、インコ、笑い声…マンドリン…すべての音がやさしい。ありがとうございました。
―”ひとりの想い”が”みんなの想い”になる、上映会という場の豊かさをあらためて教えられました。押富さんをはじめ、スタッフの皆さま、参加者の皆さまに心からお礼申し上げます。ありがとうございました。
■2016年3月19日 大阪市 主催者:「風は生きよという」inおおさか上映実行委員会
大阪で19日に開かれた上映会は、出演されている新居優太郎さんご家族の地元大阪ということもあって、大盛況だったようです。上映会を主催してくださった方から、次のような上映報告を頂きましたのでご紹介させて頂きます。
3月19日、“ドキュメンタリー映画『風は生きよという』上映会と、お話・交流会”を開催しました。午後1時30分開場の予定ですが12時を過ぎたころには車いすやストレッチャーに乗った方がロビーに姿を見せ始めました。スタッフが会場準備を始める頃にはたくさんの方たちから、受付を探して声がかかります。大幅に予定を早めて、1時過ぎには開場、受付を始めたのですが、続々と人の流れが生まれました。
車いすとストレッチャー用に両サイドのイスを外してスペースを作っていたのですが、今度はイスが足りなくなって片付けたイスをもう一度並べて定員用の120脚を全部並べました。全体に前に動いてもらい、できたスペースに別室からイスを40脚増やして、さらに別の場所から丸椅子を持ち込んで並べました。
結局立ち見の人も出て、190人ほどの入場者となりました。
5時30分開場の2回目も、70人ほどの参加者があり、合わせると260人、私たちスタッフ自身が驚くくらいに、多くの人たちが参加した大盛況のイベントが実現しました。
実行委員会の目標は二つありました。一つは、障害者が社会で当たり前に生きていることを、一人でも多くの人に知ってほしいということ。そのために作ったチラシですが、当初3000枚もあれば十分ではないかと思っていたものが、増刷に次ぐ増刷で18000枚を作り、小・中・高校や支援学校、役所や家庭などに配布して、すべてまき切りました。もう一つは、一人でも多くの人に、この映画を見てもらい、そして出演しているユウタロウさんや当事者たちの話を直接に聞いてほしいということでした。その二つの目標がどちらも達成できた満足感を持つことが出来ました。
トークショーに出演した、新居優太郎さん・真理さん・大作さん、中井早智さん(写真で登場した沙耶さん)、岸本彩さんのお話は、参加者の心に染み入り、課題を投げかけ、考えるきっかけを作ってくれたのではないでしょうか。やっぱり人が集まるというのはいいものですね。期待感や、希望や、勇気がじわじわーと染み出て、こみあげてくるような気がします。 (松森俊尚さん)
■2016年3月12日 東大和市 主催者:「風は生きよという」東大和市上映実行委員会
12日に東大和市で開かれた上映会は満員御礼でした!
ご覧下さった皆さま、主催者の皆さま本当に有難うございました。
映画出演者の海老原宏美さんの地元ということもあって、会場は熱気に包まれていました。
定員300名のホールだったのですが、入りきれずお断りしてしまったたくさんの方々、すみませんでした。
来週以降も都内各地での上映会が予定されていますので今回ご覧になれなかった方々はぜひ、あらためて予定を組んでいただけたら幸いです。
詳しくはHPの「上映情報」をご覧下さい!
■2016年3月7日 盛岡 主催者:CILもりおか
7日に盛岡で開かれた上映会では、上映後に北見の渡部哲也さん(映画出演者)の講演、
地元の呼吸器利用者と難病支援相談員の方とのパネルディスカッションが併せて開かれました。
参加者からは、「私もあまりの苦しみに心中を考えました。しかし、それは私たち障害者が、生きにくい社会、制度だからです。つながりたいです」
といったご感想や、「自分の知らない現実を見る・知る、良い機会でした」といったご感想をいただきました。生きるため、つながりましょう。
上映会がひととひととが出逢い、つながり、生きる糧となる場になることを私たち上映実行委員会はこころから願います。
■2016年2月20日 札幌 主催者:医療法人稲生会
20日に札幌で開かれました上映会。
主催者である医療法人稲生会のスタッフの方から、うれしい報告が届きました。
2回の上映で、170名近い方がご参加される盛況だったとのこと。
車いすを利用されてる方が10名以上参加されたり、寝たきりのお子さんが横になって鑑賞できるスペースも確保されたということです。
会場では、意思伝達装置の機器展示もなされたそうで、何人もの方が実際に体験してみたそうです。上映会ではきっと初めての、ユニークな試みですね。
「とても良い映画だった」「勇気をもらった」といった感想を参加者の方から頂いたそうで、本当に有難く思います。
「自分のところでも上映会を開きたい」とのお申し出も、おふたりの方からあったそうです。うれしいなあ。
この日に向けて、主催者の皆さまの地道で懸命な宣伝活動があったからこそのことと思います。本当にありがとうございました。
■2015年12月14日 上映後の対談から(藤井克徳さん&海老原宏美さん)
監督の宍戸です。
昨年12月14日、川崎市で開かれた「風は生きよという」上映会で、上映後に対談された藤井克徳さんと海老原宏美さんによるお話が素晴らしかったので、遅ればせながら要約させていただきました。ぜひ、ご一読いただけたら幸いです。
「風は生きよという」上映後の対談から
とき:2015年12月14日
ところ:多摩市民館大ホール
主催:NPO法人らぽおる
対談:藤井克徳さん (日本障害者協議会代表)
海老原宏美さん (映画出演者、自立生活センター東大和理事長)
1.映画への感想
―まずはじめに、藤井さんと海老原さんから映画への感想が述べられました。
藤:この作品からは、与えられた人生を生きるのではなくて、生きることを獲得して行くんだというメッセージを強く受けとりました。
海:この作品は“障害”切り取って描くのではなくて、その人の生活や人生、あり様をトータルに描いている。常々、障害を特別視するのでなくて、そのままのその人を受け止めてほしいと思っていた。また、意思表明ができるかどうかが人間にとって一番重要なのではなくて、自分の目の前にいる相手のことを、お互いに認め合えるかどうかが大切なのだと感じている。
藤:日本も2014年に批准した障害者権利条約。この中でいちばん短い条文は、17条。そこにも、”社会や家族は障害をそのままの状態で尊重する”とありますね(注1)。
2.生きるに値するいのち、値しないいのち
―続けて藤井さんから、国会で議論されている尊厳死法案への危惧と昨年夏のドイツでの経験が伝えられました。
藤:尊厳死法案というものが国会で議論されていますが、死に「尊厳」や「安楽」なんて言葉を与えるのはカモフラージュでしかないと思うんです。昨年夏、NHKの番組取材でドイツを訪問してきました。ナチスによるユダヤ人虐殺の前には20万人にものぼる障害者が虐殺されていました。そこでは、「生きるに値しない命」という線引きがされていた。”生きる価値”の基準が、「働けるか・働けないか」「生産性が高いか・生産性が低いか」という点に置かれ、働けない人、生産性が低いとみなされた人間は生きるに値しないとされた。時間/空間を超えていまの日本でも、同じような価値観が広がっているんじゃないかと、危惧しています。
3.障害者を見る社会の目
―上の話を受けて、海老原さんが藤井さんに問いかけます。
海:私は月590時間のヘルパー派遣を受けているんですね。そうすると、私の介助のために月々150万円くらいの税金が掛かっている計算になる。もし、「障害者はお金ばかりかかる存在だ」「迷惑だ」と言われたとしたら、藤井さんはどう答えますか?
藤:お金はむしゃむしゃ食べるものではなく、循環するもの。消えてなくなるものじゃない。ヘルパーを利用することで雇用創出にもなるし、買い物をしたりすればお金は社会に拡散して行くもの。私は「重度の障害者」という言い方はあまりしたくない。「ニーズが多い人」と言っている。こういう人たちは、社会に何かを気づかせる力を持っている、社会のフロントランナーだと思う。
また、OECD(経済協力開発機構)加盟国のGDP比で比較しても、障害者への公的支出の割合が日本は低いです。
4.いま日本が進んでいる道
―話は、現在の日本政治へと向います。国民をひとつの方向にまとめようとする強権な政府への疑問が、噴出します。
海:いま「一億総活躍」社会を唱えている日本政府。“活躍”の定義は何?誰が決めるの?という疑問が拭えません。
藤:「一億総特攻」とか「一億総懺悔」とか、政治が「総」をつけてくると危ないですね。日本がまた間違った道を進みはじめている気がします。
海:2018年からは義務教育の現場で道徳が教科になる。それまで道徳の「時間」だったものが、教科として評価がつけられるようになる。それは、生徒ひとりひとりの内心を評価するということ。道徳の基準はそもそもあいまいなものだし、つくりようがないはず。それをあえて評価しようとするのは、国家の考えに沿う、国家に都合のいい人間をつくろうとしているからとしか思えない。
藤:ドイツの経験に照らして考えると、弱い人を排除しようと仮に障害を持った人が社会から消されると、次の弱い人探しをはじめる。高齢者、病気の人…と「弱いもの探しの連鎖」がどこまでもつづいていく。厳しい状況の障害者を守ることは、強靭で足腰の強い社会をつくることにつながる。その意味で、社会が障害者にどう対応してるかは、その社会の人権を測るバロメーターになっている。
5.障害とは何か
―ご自身の経験から、海老原さんが「障害」とは何かを述べていきます。
海:私は幼い頃からずっと、周りに自分をフォローしてくれる人がいたので自分が障害者だと感じなくて済んできた。「自分は障害者なんだ!」と思い知らされたのは、大学3年の就職活動の時。「あなたは障害があってひとりでは何も出来ないでしょ」と企業はエントリーシートすらも受け付けてくれなかった。障害は、その人の暮らす環境や価値観によって生み出されるものだと痛感した。インクルーシブの根本にある「分け隔てしない」、「一緒にいる」ということがとても大事だと思う。
藤:これまでは「障害」というのは個人の属性としてのみ見られてきた(医学モデル)。しかし、「障害」は元々社会にあるんだ(社会モデル)という考え方が広がってきている。
ただ、そうは言っても、という経験を去年スペインでしてきた。どうしても、ピカソの有名な「ゲルニカ」の絵を見たくて、スペインに行った時のこと。私は全盲のために絵が見えないので、ゲルニカを見ている人に1人5分ずつで「この絵はどういう絵ですか?」と尋ねて、説明してもらった。6人にお願いしたんだけれど、その説明の内容がみんな違っていた。笑
障害をどう考えるかという時に、基本的には社会モデルでいくけれど、これからはそれに加えて医学モデルによる考え方でどう足りない部分を補っていくかが課題になるなと感じた。
6.社会運動をいかに進めていくか
―おわりに、障害のある人が街へ出て行くことの意義を、ふたりは語ります。
藤:4月からは、障害者差別解消法も施行される。これから、どうやって柔らかい運動をつくっていくかと考えている。北風と太陽でいえば、太陽の運動。それを実現していくためには、社会運動が文化と組むことが大事だと思う。音楽や映像、文芸や文学などと組んで進めていくことが、運動が世の中の人に浸透する大きな力になると思う。
障害者権利条約には、「たたかう」という言葉が1ヵ所だけ、使われている。それは、第8条。「定型化された観念、思い込みや固定観念とたたかう」とこう記されている(注2)。このたたかいは続けていく必要があると思います。
海:映画に出てくる八王子市立弐分方小学校の子どもたちと、先月1年ぶりに再会した。6年生の子は去年階段の上り下りの時に私を運んでくれた子たちだった。1年経ってもちゃんと覚えていて声をかけてくれて、運び方も前より上手くなっていた。1日の触れ合いだけでも及ぼす影響はある。
藤:「平等」の反対概念は「差別」ではなく「無関心」。私たちの姿を世の中の人に見てもらうことが大事。障害を持った人をどれくらい街の中で見かけるか。その姿をどれほど人の意識に浸透させられるかだと思う。
以上
※(注1) 障害者権利条約 第17条 「個人をそのままの状態で保護すること」
「全ての障害者は、他の者との平等を基礎として、その心身がそのままの状態で尊重される権利を有する。」
Every person with disabilities has a right to respect for his or her physical and mental integrity on an equal basis with others.
※(注2) 障害者権利条約 第8条 「意識の向上」
1「締約国は、次のことのための即時の、効果的なかつ適当な措置をとることを約束する。」
(b)「あらゆる活動分野における障害者に関する定型化された観念、偏見及び有害な慣行(性及び年齢に基づくものを含む。)と戦うこと。」
To combat stereotypes, prejudices and harmful practices relating to persons with disabilities, including those based on sex and age, in all areas of life;
注1,2とも、外務省HPから引用。
なお、この文章は対談を正確に文字起こししたものではなく、対談の要旨をまとめたものです。
藤井さん、海老原さんに確認していただきましたが、文責はメモをした私にありますことを併せて記しておきます。
(文責 宍戸大裕)