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【報告】劇場トーク「ここから青春-48歳の夏」(Part.3)

劇場トークのご報告、第3弾をお届けします。

【7月11日(月)】
テーマ;「ここから青春-48歳の夏」
ゲスト;小田政利さん(出演者)、宍戸大裕(監督)

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(宍戸大裕監督)
皆さんこんにちは。監督しました宍戸と申します。今日は最後までご覧くださいまして、どうもありがとうございます。本当に暑い中、お越し下さってとても嬉しいです。今日は出演者の小田政利さんと一緒にお話したいと思います。小田さん、よろしくお願いします。

(小田政利さん)
はい、よろしくお願いします。

(宍戸)
今日はご存知のように、字幕と音声ガイドがついている上映で、視覚障害の方と聴覚障害の方に情報保障をつけました。アップリンクの歴史で音声ガイドがついた上映は今日が初めてだそうで、皆さん実は記念すべき時にいらしたという…あんまり嬉しくないですかね(笑・拍手)ありがとうございます、拍手して頂いて。
今日はテーマが、小田さんの話。「ここから青春―48歳の夏」というタイトルにしました。映画の中で…あの撮影はちょうど二年前の夏なんですけれども…小田さんが自分の存在意義、「一体なぜ生きているのか分からなくなる時がある」と、らしくないことを言ってましたね。でも小田さん、昨日もトークショーに来られてて、沢山の看護学生がいらしてたんです。終わった後に女子学生に囲まれてて、すごい青春だなって。楽しそうでしたね。

(小田)
はい、今日のタイトルのように、まさに…。あれが最後にならなきゃいいんですが(笑)。

(宍戸)
「ここから」ですから(笑)小田さんと、こうやって二人で話すのは、実は今日初めてなんです。もう上映が始まって一年くらいなのに、小田さんと二人っていうのは初めてですね。小田さんの家にも撮影に行ったことがあって、小田さんの一日を撮影しているんです。でも使ってるのは小田さんのお母さんの遺影だけっていう…。

(小田)
今、ここで文句言っていいですか(笑)。僕、この映画作るっていう時の言いだしっぺなんですけれども、監督が撮ってくれることになって、じゃあうちで撮影しようということになって、監督がうちに来たんですよ。で、結構いい時間ず~っといてくれて撮影して、映画が完成してから見てみたらうちのシーン全くないんですね(笑)。映ったのが、仏壇の中の母親の遺影だけ。もう一瞬だけなんです、僕使われてるの(笑)。

(宍戸)
実は今回の取材で、映っている人たちっていうのは、新居さん、渡部さん、海老原さんって、皆さん呼吸器を使いながら活き活きと暮らしている方々なんですけれども、実はそうじゃない人もたくさんいて、取材に応じてくれなかった方々もお二人くらいいました。
1人は山形の方で筋ジストロフィー、小田さんと同じ障害で、過疎地で暮らしている方なんですけど、どんどんヘルパー事業所がなくなっていく、看護師が減っていくという中で、自分で自立して暮らしたい。でも自治体からの支給時間が減っていくというような状況、それは日本のいろんなところで今起きていることなんですね。それを伝えたいと思って、その取材を申し込んだときに、“受ける余裕がない”という風に言われました。
もう1人は広島の方のALSの男性で、一人で暮らしている方で、自分は呼吸器をつけないと決めていると。で、つけないと決めている方の気持ちも大事だなと。ALSの方の場合、呼吸器をつけるのは3割位で、7割位の人はつけないという選択をされるという風に聞いているので、その本当の苦しいところを聞きたいと思っていたのですが、その方からは「そっとしておいてほしい」ということで断られたんです。
小田さんは進行性の障害ですよね。昨日できたことが今日できないとか、明日はもっとできないっていう、そういう感覚ってあります?

(小田)
環境が変わると出来なくなるっていうことがあって、僕、もの書きが出来てたし、パソコンも打つことが出来てたのが、人工呼吸器を付けたくなくて付けたくなくて、そうしてるうちに酸欠で意識不明になっちゃって。気がついたらベッドで寝たきり。それで3カ月経ったら文字も書けなくなっちゃったり、パソコンが打てなくなっちゃったり、ということで。僕の場合は「出来なくなるだろう」じゃなくて、気がついたら「あぁ、これが出来なくなってたんだぁ」という風な形でずーっと来ていて、ひとつひとつ無くなっていく。
自分の中では不安っていうよりは、その時の自分の身体の状況に妥協するっていう、そういう形で生きてきた。呼吸器をつけてからこんなに辛かったんだって思う反面、逆に付けてみて体力があって動けるようになったっていう二つの気持ちの中で、いつも迷っている。障害が進行すると、「いずれそういうことができなくなるんだ」っていう不安もありますけれども、その状況を迎えた時にいかに自分の中で妥協するかってことをずっとしてきた、というような感じです。

(宍戸)
妥協というのは、諦めるということ?

(小田)
諦める…。でも僕の場合は、じっとしてるのが嫌いだったんです。呼吸器付けて外出できなくなったときは周りの情報が無さすぎたんで、「じゃあ妥協と同時に次のステップとしてはどうやって外出できるのかな」っていうのを常に考えてきました。
だんだん孤立してきてしまうと、物事をネガティブにばかり考えてきてしまって。どんどんどんどん、人が自分の事を悪く考えているんじゃないかとか考えてしまったので。車いすに乗れるようになって、外出できるようになって、気持ちの変化っていうのはありましたね。基本的にはネガティブに考えてしまうタイプなので。
呼吸器付けちゃった後ってのは孤立感がどんどん強くなるし、「あぁ、このまま自分も独りになってっちゃうんだ、もうそれで仕方ないんだ…」ってところに入っていっちゃったんですけれども。でも心の奥では、やっぱり昔の同級生にまた普通に話が出来るようになりたいなぁとか…その時には今のようにベラベラしゃべれなかったので。楽しい言葉って出てこないんですよね。だからブログとか書いても、なんかもうネガティブなことばっかり書いて誰も返信くれないっていう(笑)より孤立感に入っていってた。

(宍戸)
ブログで暗いことばかり書いてたんですか。誰もそれにレスポンスくれずに(笑)。

(小田)
くれずに。より暗~くなっていくんですね。

(宍戸)
今日のテーマは「ここから青春」っていう話だったんですが、「ここから」が全然出てこないですね(笑)。
小田さん、7月31日で48歳だそうです。最近もその暗~いブログ、書いてるんですか。

(小田)
最近は全然。やっぱり外出るようになってくると、色々な人との出会いがあって、それが気持ちを明るくさせてくれますね。昨日もまさか女性に囲まれるなんて思ってもみなかったですけれども(笑)。もうちょっといい格好してくれば良かったかな、とか思って…(爆笑)。

(宍戸)
小田さん、Yシャツの胸ポケットに一杯物を入れてるので、昨日破れてましたもんね。今日は破れてないですね、良かった。でも今日は多分、若い方は…。

(小田)
おいおい(笑)。今日は一応、身だしなみしてきたつもりがヒゲ剃るの忘れてきちゃったんですけれど…。
さっき彼女って話したんですけど、彼女出来たんですよ、呼吸器つけてから。(客席から「ヒューヒュー」)うわ、ありがとうございます。

(宍戸)
今の、サクラですね(一同笑)。それはどんなきっかけで?

(小田)
僕の場合は呼吸器付けてることが逆にトクになって。呼吸器付けて動き回る人がいないので、「ちょっと話してくれ」とか色々お誘いがあって。いろんな事業所でいろんなトークをさせてもらってるうちに、まぁちょっとね、弱視の方と付き合うことが出来まして。で、同棲もしまして。(客席から「えぇぇぇ~」)

(宍戸)
なんか、どよめきが起きてますね(笑)。”ホントかよ”っていう声が(笑)。

(小田)
アレェ?おっかしいなぁ~。14歳下の彼女だったんですけど。(客席から再度「えぇぇぇ~」)おまけに彼女が「ペット飼いたい」と言って。こういう呼吸器付けちゃうと、衛生面に良くないって言われるんですよ、ペット飼っちゃいけないって。でも彼女が”飼いたい”っていうんで飼ってみたら、衛生面を気をつけながら全然飼えるわけですよ。桜文鳥、「キキ」って名前つけて。あと子犬も。「ニャンモ」と名付けて。ちょっと後ろ姿がネコみたいだったんで、ネコもどきっていうんでニャンモって(一同笑)。かわいいんですよ、それが。

(宍戸)
小田さんはなんて呼ばれてたんですか。

(小田)
え…、マー君って言われてましたけど(一同笑)。

(宍戸)
マー君って感じじゃないですけどね。

(小田)
なにそれ!だから子犬連れて散歩する人が横切ると、心の中では「あぁ、うちの子が一番かわいいな~」みたいなね(一同笑)。もう、そうなっちゃうんですよね。

(宍戸)
ちなみに、その方は今…。

(小田)
…出て行っちゃったんですよ!(一同爆笑)。なかなかね、上手くいきませんね…。

(宍戸)
なんで出て行っちゃったんですか?

(小田)
私の稼ぎが悪くて、甲斐性なしみたいな感じになってしまったんですけれども…。

(宍戸)
はぁ~シビアですね…。

(小田)
はっはっ…、あ、いや、あの~、笑ってくださいね、ここ(一同笑)。暗くなっちゃうので、はい。今は恋人募集中ですね。48歳に間もなくなりますけれども。今さら募集して来んのか、って話もありますけどね。皆さん、いい人いたら紹介してくださいね。

(宍戸)
みなさん紹介できるような方、いますか?…いないみたいですよ(笑)。

(小田)
(笑)でも、また出会いの場を作るためにも、今度喫茶店をやりたいなと思って。呼吸器を付けて外出すると大きい車いすになっちゃうんので、それでも入れる店を北区で。そこで小っちゃな映画上映会とか詩の朗読とか、あるいはミニセミナーとかできるような、そういうコミュニティカフェができたらいいな~なんて(会場から拍手)あぁ、ありがとうございます!
いまこの時を本当に楽しんでいきたいと思います。僕も呼吸器付ける前は情報が全くなかったので母には“呼吸器を付けないでくれ”って言ってた。僕が呼吸器付ける前はテレビの中では本当に暗い話ばかり。呼吸器付けてしまうと介護してくれる家族にすごい迷惑がかかるっていうような情報しか得られなかったんで、僕もそういう情報の中で人工呼吸器は付けたくないと思ってしまってた。家族が意識をなくした僕に付けてくれたんですけれども、映画に出てきた「尊厳死法」があったら、僕はその時に亡くなってました。皆さんには会えませんでした。ここにはいませんでした。なので、この映画を通じて、本当に呼吸器つけても楽しく生きていけるんだということが広まっていってくれたらなと思います。

(宍戸)
小田さんがまとめてくれました(笑)。きょうはどうもありがとうございました。

以上

(要点採録/文責 宍戸大裕)

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