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【報告】劇場トーク「ぼくの生活How much?-自立生活にかかるお金の話-」(Part.7)

劇場トークのご報告、第7弾をお届けします。

【7月15日(金)】
テーマ;「ぼくの生活How much?-自立生活にかかるお金の話-」
ゲスト;小田政利さん(出演者)、入間川仁さん(呼ネット)

 

 

 

 

 

 

 
(小田政利)
こんにちは皆さん、雨の中、映画を観に来てくれてありがとうございます。ここから僕と、映画の上映実行委員会でお手伝いしてくれている入間川さんとでトークをさせてもらいます。

(入間川仁)
呼ネット事務局の入間川と申します。よろしくお願いします。

(小田)
小田と申します、よろしくお願いします。僕、映画の中では「ちんちくりんな生き方」とか言われちゃってますけども(笑)、普通に呼吸器付けながら生活しているうちの一人なんです。簡単に自己紹介させて頂きますと、「筋ジストロフィー」っていう病気で、人工呼吸器を24時間使って生活しています。両親他界してるので、今、マイクを持って隣にいてくれるように、介助者が24時間、一日3交代くらいでついてくれて、生活しています。一人暮らししてます。今日のテーマ「ぼくの生活How much?-自立生活にかかるお金の話-」ということで、お話させてもらいます。

(入間川)
なんか、お金の話なので、なかなか突っ込みにくくて(笑)。もともと海老原さんから降ってきたお題なんですよね。まぁ取りあえず目につくところからなんですけど、でっかい車いすに乗ってますよね、小田さん。で、どうなの、これ高いの?って思いますけど。素人目には。

(小田)
そこから来る?そう。車いすはフル改造されてるんで、結構ね…50万くらい?50何万しますね。改造費含めて。

(入間川)
そういうのは、ポケットマネーで買えるんですか?

(小田)
だったらもう、働いてませんって。

(入間川)
そうですか。…てことは、誰かがお金をくれたりとか?

(小田)
そうそう。行政から僕の体の状態に合わせてお金が下りて、車いすに乗っていろいろ移動出来てるってことで。まぁ、どこ移動してるかっていうと、飲んだくれたりしてるだけですけどね。

(入間川)
…なんか、終電を逃すって噂は聞くんですけど。実際、見たことはないですけど(笑)。

(小田)
その話?今日は終電逃したときに付き合ってくれる知り合いもそこにいます。

(お知り合い)
はい!(笑)

(小田)
「自己負担」分っていって少しだけお金支払って、こういう車いすを作ることも出来るんですけど、そういうことをあんまり知らない人も中にはいて。特に人工呼吸器を使って生活する時に、何十年前だろう…、呼吸器が保険適用されてなくて、呼吸器買うために200万位無いと病院から出てこれない、在宅で生活が出来ないってところを僕らの大先輩たちがいろいろと活動して、募金つのったり、寄付してもらったりして、在宅で生活できるようになりました。
そういう大先輩がいてくれたおかげで、今の僕がいるのかなと…。僕もそうですし、映画に出てきた、海老原さん、渡部さん、新居君。今はみんな「在宅で生活しよう」と思う気持ちがあれば、生活できるかなと。ただ、その時みんな気にするのが、やっぱり医療費。
そのあたりは自分の住んでる自治体に自分の体の状態を伝えてください。呼吸器付けても、割といまなら医療費に苦労しなくても、東京なら生活できるようになりました。地方に行くと、なかなか医療費やヘルパーさんに来てもらうお金が厳しいみたいですけど。

(入間川)
じゃあ、必ずしも資産家じゃなくても病院から出て、自分で生活できるということですね。

(小田)
そうですね。それから、呼吸器はバッテリーで動くので、一日中動き回って帰ってきて、バッテリー使い切っちゃうんですよね。で、家に帰ってきて「あぁ、ギリギリ間に合ったー!」と思って入って、電気つけようと思ったら、電気がつかない。電気代払ってなかったんですね、私(笑)。大失敗しまして、家のすぐ近くに事務所があるんで、あわてて事務所に帰って充電しました。で、充電しながら東京電力に電話かけて、「すいません、支払ってなかったみたいなんで」って言って支払方法をいろいろ聞いて、すぐに復帰さしてもらったんですけど。そんなんでなかなかね、「呼吸器使ってればもうちょっと慎重にしろよ」みたいな感じなんですけど。

(入間川)
そうですね、電動車いすだったらまぁ、動かないぐらいの話だけど、呼吸器だったら命に関わるわけですよね。

(小田)
まあそうですね。はい、気を付けないといけないんですけれどね…。あ、あんまり皆さん、真剣に聞かないでくださいね!もうちょっと気軽に聞かないと、どんどん暗くなっていっちゃうんで…(笑)。映画の中でもね、海老原さんがさわやかに楽しそう~に暮らしてくれてるんで、そのイメージを。人工呼吸器で暮らしててもいいよ、楽しく暮らせるよ~っていうのを皆さんの記憶の中にって…。

(入間川)
いやでも、海老原さんの話があんまりさわやかだったんで、小田さんを主人公にしてもっとリアリティのある映画をもう一つ作ってもいいんじゃないかっていう…そういう話もありますけど(笑)。

(小田)
フフフフ…。まぁ今日のテーマから行くと、細かい数字、値段とかそういうのを想像されている方がいらっしゃるかもしれませんけど、やっぱり呼吸器ユーザーは家の環境とか事情とか、関わってる病院とか訪問看護師とかでいろいろケースが違ってきちゃって。
僕は結構、いろいろな医療用具が必要なんです。呼吸器だけじゃなくて、痰の吸引があるんですけど、そういうものの費用を、だいたい僕が関わってる病院では全部出してくれてます、必要なものを。
ところが病院が違うと、必要なのに「これは自分で買って下さいね」って言って、自費になってしまったり。医療費自体は、だいたい呼吸器使っている人は、国で認められてる病気だと自己負担1,000円だけ。1,000円以上医療費がかかっても大丈夫なところはあるんですけど、その他の風邪ひいたときなんかは、皆さんと同じです。1割負担だったり、所得に応じて2割とか3割負担とかあるんですけど、その辺は一緒です。ただ呼吸器にかかる医療費は1,000円以上かからない。これも病気によって、いくらかかかるというのはそれぞれ違います。だから一概に「医療にいくらぐらいかかります」とは言い切れないんですけど、一般的な生活水準の方だったら、体の状態に応じて医療費は負担してもらって生活できます。
呼吸器って言うと、医療用具という硬いイメージありますけれど、入間川さんはどうだった?初めて呼吸器見たとき。

(入間川)
いや、「ホースが繋がってるな」、っていうくらいの感じで(笑)。予備知識も何もなかったので…。

(小田)
ありがとう。その軽~い感じ、大好きだね(笑)。

(入間川)
軽~い感じでしたね(笑)。

(小田)
でもね、皆さんこういう感じじゃなくて、やっぱり人工呼吸器っていうと、すっご~く「医療用具だからアブナぁ~い」っていうイメージがあると思うんですけど、それなりに押さえるとこ押さえとけばそんなに危ないものでもなくて。
みなさん「呼吸ちょっと我慢して」、「2時間我慢して」って言われても当然出来ないですよね。僕の場合も呼吸器にトラブルが起きたら息出来ないです。でも、代わりにいつでも持ち歩いているものがあります。「アンビューバッグ」っていう医療用具。手動の人工呼吸器なんですけど、風船みたいになってて、それをクッと押すと息が出来る。それを離すと息が吐ける、っていうのを、僕の車椅子のうしろにいつも持ち歩いています。
アンビューバッグを病院で認めて出してくれる人と出してくれない人がいます。このアンビューバッグって、すごい大事なんですね。家でも。
医療用品は電気製品なので、いつ壊れてしまうか分からない。でも一応、アンビューバッグさえ持ってれば大丈夫、というのがあります。ところが病院によって出してくれないところもあるので、それは安全のために自分で買わなければいけない場合があったり。あるいはバッテリーが無いと動き回れないんですけど、災害時、東日本大震災のような時に電気が止まってしまった時にもバッテリーが必要になります。でも病院によっては、出してもらえないという時期がありました。東日本大震災が起きてから、保険で認められるようになったんです。
どうしても自立生活しはじめる時には、初期費用がかかってしまうことがあります。あとは介助者。区市町村によって違うんですけど、24時間分、行政から「この人に必要です」って認められてるわけではなくて、僕でも一日20時間分です。そうすると残り4時間分、呼吸器にトラブルがあったらガマンしろって言われても無理ですよね、4時間も息を止めてろって言ったって。そんなことは不可能なので、やっぱりヘルパーがいてくれて、いざっていうときにアンビューバッグをやってもらったりが必要なんですけど、僕が住んでいる東京都北区では、「それ以上出せません」って言われてしまいます。そうすると残り4時間分は、自費。
僕、呼吸器付けてから働けるようになりまして、お給料をもらって負担できるようになったんですけど、最初のころはお給料がそこまで無かったので、ヘルパー事業所がお金貸してくれました。そういう風に周りのご厚意がいろいろあって、5年位かけてお金返しましたけど、在宅で暮らすお金はいろいろかかってしまうかなと思うんです。

(入間川)
4時間自費っていうのは初めて聞きました。呼吸器ユーザーとしては、多分、小田さんなんてもう本当に、ごくごく一握りの、日本全国をいろいろまわっている、そういう人ですよね。

(小田)
う~ん、悲しいかな、少ないのが現実ですね。

(入間川)
小田さんとしてはやっぱり、そういう人が増えてくれることへの願いがある?

(小田)
そうです。本当に、テレビなんかではもう、呼吸器付けちゃうとお先真っ暗、何も出来ない、おまけに家族にすっごい負担がかかると。自分自身がつらい、あるいは家族に迷惑をかけるっていうんで呼吸器を付けないでくれって言う人がたくさんいます。でも、呼吸器付けると色々なことはありますけど、楽しく生きていけるんだよ、っていうのをこの映画が伝えていってもらえないかな、広めていってもらえないかな、と期待しています、すごく。皆さんも今日観て、色々と感じられた方もいらっしゃると思うんですけど、是非いろんなところで「こういう映画観た」って。賛否両論、どっちでもいいです。是非この映画が広まっていって、そういう生活が出来るんだよっていうのを、テレビでは暗い話しかないんですけど、広まっていってもらいたいなと思っています。

(入間川)
…今の小田さんの夢は、喫茶店を出すことでしたっけ?

(小田)
ちょっと喫茶店のマスターになりたいと思ってまして。特に、通路が広めの。呼吸器乗せちゃうと車いすがデカくなっちゃうので…広めの、そういう喫茶店作りたいなって夢があります。まぁ、すぐには出来ませんけど、いずれ出来上がったら皆さん、是非来て頂いて。そこで映画の上映とか、あるいは朗読会とかミニコンサートとか開けるような喫茶店開きたいと思ってますので、皆さん是非、その時は来て下さい。今日はどうも、雨の中来て頂いてありがとうございました。

(入間川)
どうもありがとうございました。

以上

(要点採録/文責 入間川仁)

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