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【報告】劇場トーク「ヘルパーと私」(Part.19)

劇場トークのご報告、第19弾をお届けします。

【7月20日(水)】
テーマ;「ヘルパーと私」
ゲスト;金子ゆかりさん(出演者)、海老原宏美さん(出演者)

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(海老原)
平日にもかかわらず本当にたくさんの方にお越し頂き嬉しく思います。ありがとうございます(拍手)。
きょうは特別ゲストで、見覚えありますねこの姿(笑)。映画に出演してくださった金子ゆかりさんにお越しいただきました。きょうは海老原と金子さんでトークをさせていただきます。よろしくお願いします(拍手)。

(金子)
こんにちは。この映画に出させてもらった金子ゆかりです。きょうは雨の中お越しくださってありがとうございます。ちょっと声が小さくて、聴き取りづらいかもしれないのですが、よろしくお願いします(拍手)。

(海老原)
はい、ありがとうございます。彼女ニックネームが“うらちゃん”なので、うらちゃんと呼んでるんですけど、彼女の生活や思いについて私が質問して、答えてもらう形で進めたいと思います。まず、うらちゃん自立して何年ですか?

(金子)
うーん、実家を出てから、4年。

(海老原)
4年?!もう4年経った?ほんと。頑張ったじゃん。

(金子)
きょうです。

(海老原)
きょう?!おー(拍手)。すごい、記念すべき日。

(金子)
自立記念日です。きょうから4年目。

(海老原)
すばらしい。何で自立しようと思ったの?

(金子)
自立しようと思ったのは、8年前くらいなんですけど、ちょうど父が体調を壊して、倒れちゃったことがあって、それまでは結構毎日楽しく猫に囲まれて暮らしてたんですけど、お父さんが倒れたことでこの生活がずっと続くわけじゃないっていうことが分って、自分の将来について考えるようになって。どうしようって、自分も寝たきりだし、重度だから、親がいなくなったら施設に入るしかないみたいな。そういうことに気がついて。
でもなんか、やりたいことがいっぱいあってそれまでの生活がすごい楽しかったから、そういう生活をして行きたいという思いがあって。他の人はどうしてるのだろうと思って、ネットで調べまくって、そこで海老原さんと出会って、どうやったら1人で出てこられるか、介助者と生活ができるかを少しずつ知って、いまに至ると。

(海老原)
お父さんが体調崩して、このままじゃ危ないなと。せっかくの猫に囲まれた生活が崩壊だと。施設に入るのイヤだとなって、出会ったんだよね。丁度その時私、mixiをやっていて、うらちゃんから、「うら」という名前で突然メッセージが来たんですよ。誰だこれ?と思って、読んでみたら「助けて下さい」みたいな、結構切実なメッセージだったんですよね。
これは大変だと思って、私がいる自立生活センターにとりあえずおいでと。電車とバスでねと(笑)。タクシー使っちゃダメだよという感じで、呼んだんですよね。あの時本当はうちに呼んで、家とか見てもらいたかったんだけど、入れなかったんですよねエレベーターに。ぎりぎり。3センチ入れなくて(笑)急遽、事務所を開けて来てもらったんですけど。将来こういうことしたいとか、すごく思いがあって。あの時、2時間くらいですかね。

(金子)
そうですね。

(海老原)
話して、それでワーイってなって、帰る時呼吸器の栓抜けて(笑)うらちゃん死に掛けたねとか話しながらね。お父さんが大反対だったのよね。かわいい娘を、そんな出来る訳無いだろうと、結構説得に時間かかってたね。

(金子)
本当に最後の最後、外堀を・・・

(海老原)
外堀を、固めて…

(金子)
固めてがっちり(笑)

(海老原)
「しょうがないか」ってなったんだ。実際に生活してみて、理想の自立生活像と、現在のギャップみたいなものはどんな感じ?

(金子)
やっぱり、ヘルパーさんと共同生活というか、他人と24時間、ずっと過ごすということの安心はあって、それはすごいいい面で、出来ることも増えたんだけど。でもやっぱり、ヘルパーさんもひとりの人なので、考え方もそれぞれで違うから、どこまで譲歩しあうかというか・・・。

(海老原)
具体的にこういうところは親より頼りやすいとか、ヘルパーが入ったことで出来たことってどういうこと?

(金子)
親が、共働きだったので、お店やってる日はずっと1人で過ごして、なんかあった時に電話で呼ぶと。だから飲み物とかトイレとかずっと我慢して、まとめて頼んだり。だから結構脱水になったりとかあって。

(海老原)
うらちゃんちはラーメン屋さん?

(金子)
ラーメン屋です。

(海老原)
お父さんとお母さんが1階で働いてて、うらちゃんが2階で寝てて、どうしてもって時は電話で呼ぶんだよね。ラーメン屋さんの宣伝しといたほうが良いよ(笑)。

(金子)
池ノ上駅から徒歩10秒くらいのところにある、三友軒(さんゆうけん)です(笑)。

(海老原)
みなさん検索して下さい(笑)。いままではそうやって親に気兼ねする生活だったけど、ヘルパー24時間いれば頼めるようになったからその点に関しては良いと。でも中には上手くやっていけない人もいると、具体的にどんなことがあったの?

(金子)
生活リズムを・・・本当に、夜行性なので(笑)

(海老原)
うらちゃん本当に夜行性なんですよ(笑)。夜中に寝てるとこ見たこと無いですよね。

(金子)
夜中にちょっと、こそこそやってるので、「早く寝たほうが身体に良いよ」と。

(海老原)
余計なお世話だよね(笑)。

(金子)
そうですよね。食事のことだったりとか、「もっと野菜食べたほうがいい」とか(笑)、私のこと心配してくれてることなんだけど、でも少食だから、好きなものでお腹満たしたい。

(海老原)
肉だよね(笑)。肉でお腹満たしたい。限られた胃の中にね。そういう時うらちゃん何て言うの?

(金子)
ちょっと取り入れたり・・・

(海老原)
取り入れるんだ(笑)えらいね。えらい利用者ですよ、これ(笑)。それで納得するの?その人は。

(金子)
なんか、もっとエスカレートする感じ(爆笑)。

(海老原)
そうだよねえ。そのエスカレートどうやって歯止めかけるの?

(金子)
やっぱり、最終的には外れちゃって。

(海老原)
クビ、クビにする(爆笑)。

(金子)
事業所の人に相談して、その人はちょっとイヤだと。

(海老原)
その「クビ・ポイント」はどこまでいったらムリって感じ?(笑)

(金子)
もうなんか、失礼な態度を取られたりとか、こっちが頼んだことに対してすごい怒ったりとか。

(海老原)
うふふふ、怒るとかあるの?

(金子)
あります。それが普通になってるのか、どんどん迫ってきておかしいなと。

(海老原)
うらちゃんには何人くらいヘルパー入ってます?

(金子)
15人くらい。

(海老原)
理想といえば理想だね。そんなもんですよ24時間介助の人は。15人~20人くらいいた方がいいね。私は24時間ではないけど、1日平均すると20時間くらい。12,3人、だけど誰かがキャンセル出すと、もうベッドの上で寝てるしかない、全然臨時がいないみたいな感じになるので。そういう困ったさんは何割くらいいますか?

(金子)
・・・・・・うーん。

(海老原)
過去の3年間の中で、大体何人くらいいた。お辞め頂いた方(笑)。

(金子)
結構多い。ヘルパーさんの都合でやめた方もいるので。お辞め頂いたのは・・・(笑)4,5人ですかね。

(海老原)
結構いる感じですね。でもすごく良いなっていう人もいる?

(金子)
はい、いますね。でもそうなるとバランスが悪くて、その人ばっかりになんか言っちゃうと。でもその子が辞めちゃったら・・・。

(海老原)
そうだよねえ。利用者さんの中にはお気に入りの人をシフトにたくさん入れて、週5で入るとかいう人もいるんですよね。すごくいい人で技術もあって感じも良くて、そういう人がたくさん入ってくれたらそれは安心だし、自分がやりたいことパッと出来るんだけど、やっぱり何年も続かないんですよね。そういう関係になっちゃうと。で、いい人ばっかりいっぱい入れると、こう、上手くない人が育つスキが無いというかが、難しいんだよね。自分の生活どこまで安定させたいかと、育成と、慣れてもらうということと、その関係がすごく難しいよね。

(金子)
本当にその、技術的な面、介助が上手いとか下手とか、そういう理由で辞めてもらったことはなくて、やっぱりその、自分のやりたいように沿ってくれる人をすごい大事にしてて、どんなに介助が出来ても、押さえつけたりとかって人はちょっと、申し訳ないけどって感じで・・・。

(海老原)
技術じゃないんだよねえ、続くかどうかって。まあ技術も無くはないけど、やっぱり関係性の部分。一緒にいて安心だっていう人。あるよね、10何人もいれば。「あ、きょうこの人だ~・・・はぁ・・・」っていう人と(笑)、「あーあと10分で誰さん来る!」っていう時と、違うよね。それはなくならない、しょうがないと思うけど、しんどい人が多すぎたりすると、きついね。
うらちゃん、時期はすごくさかのぼって、合宿。合宿ですよ。

(金子)
地獄の・・・。

(海老原)
地獄のとか言わない(笑)。スパルタって言って。私とか映画に出てきた小田さんがつくっている団体に「呼ネット」というのがあって、人工呼吸器ユーザーの支援というのをやってるんですね。会員さんが全国に百何十人っていらっしゃるんですけど、自立したい会員さんを、あの時参加者3人だったよね。もうすでに自立生活をして、自立生活の酸いも甘いも知っている事務局メンバーと寝食をともにして、あの時何泊だったかな。

(金子)
3泊4日。

(海老原)
3泊4日、頑張ったなあ。合宿をやったんですよ。日中は真面目に制度とか生活費、行政とどうたたかうかとかを勉強して、夜は裏話大会みたいにして、飲み会だったんですよね。

(金子)
毎晩。

(海老原)
毎晩ね。でもみんな、普通に家族と同居してる会員さんだから、そんなに体力無いだろうと思って、「有志で良いよ」とか「寝たくなったら寝てていいよ」って言ってたんですけど、毎晩みんなものすごい確率で参加して(笑)、3時とかまでみんな呑んだくれて、すごかったよね。あっちが本番だよね。うらちゃんそれに参加してくれたんですよ。あれ、地獄だった?

(金子)
飲み会がすごく楽しくて、参加した時もそれが目当てっていうか(笑)すごいのが、介助者をその日会った人に入ってもらうと。それは自分の中で衝撃で。

(海老原)
ははは。そうなんですよ。参加条件として、自分が普段使っている介助者さんは立入禁止。こちらで用意したスタッフをその場で自分で指示して、使ってくださいというのを4日間やったんですよ。ものすごい人数のボランティアとか、他の事業所の介助者を集めてきて、じゃあうらちゃんの介助者この人ねっていう感じでやったんですよね。もう初対面ですよ。

(金子)
それまでは二人体制で、お兄ちゃんとヘルパーさんとか、友だちとヘルパーさんとか、介助者がふたりいて見てもらってて、それを1人で、中には呼吸器のことよく分らない人もいて、気をつけることとか、その場で伝えてとか、ずっとテンション高くて。

(海老原)
だってうらちゃんずっと「鏡月」のロック呑みながら裂けるチーズ食べてたもんね(笑)。でも、自立生活はじめてすぐの時はやっぱりみんな初対面だもんね。あの過酷さやっといて良くなかった?無理やり言わすという(笑)。

(金子)
そうですね、なんか自分の限界を知ったというか。自分には出来ないなということが結構分った。入浴とかも。

(海老原)
うふふふ、お風呂ね。呼吸器ユーザーって訪問入浴使ってる人多くて、バスタブ運んでくれる業者があるんですよ。そこにお湯入れて、自分の部屋とかで入れるんですけど、「えーみんなで大浴場行こうよ!」って言って無理やりみんなで入ったんだよね。すごい人数体制で。うらちゃんは恐怖におののいていて(笑)「私ヤダ、ぜったい風呂入らない」って言って。ちょっとね、サバイバルでしたね。
じゃああの合宿で、自分はここまでは出来るけどここからはきついなとか、っていうことが確かめられたと。

(金子)
勢いで出ると危ないと。そういうのも自分で判断していかないと、自分を守るのは自分なので。ここまでは出来るけど、ここからは大人しくしとこうと。

(海老原)
そうかそうか。3年間自立生活して、そのあたりの見極めが磨かれてきてると思うんだけど、最後に、もっとこういう生活をして行きたいなとか、ヘルパーさんともっとこういう関係性を築いていきたいと、そのために自分がどういうことしたらいいかなとか、夢を語ってもらえますか?

(金子)
前に海老原さんが泊まりに来た時に、呑んでて、「じゃあ外行こう」って言い出して。

(海老原)
そうそう。もううらちゃん何ヶ月も外出てないよって言うから。「散歩行こうよ」って。そしたら「え、え、え」「でも、え、え」って言ってるうらちゃんを無理やり車椅子に乗せて、夜の街に繰り出したっていう。

(金子)
そういう、思い立ってやっちゃったみたいな、ちょっと雪が降ったから雪を見たいなとか、きょうは星が見えるよとか、夕方とかちょっと風に当たりにとか。何の目的も無いけどただ出てみたいって思った時に、出れる生活が憧れで。ちょっとコンビニに寄って、のんびりノラ猫探すとか(笑)それがすごい憧れで。
いまは出かける曜日が決まってて、外出介助できるヘルパーが限られてて、制限がいっぱいあって中々その理想を叶えるのが遠い。ヘルパーさんとの関係性とか、付き合い方もまだ模索中で。どこまでを頼んでいいのかとか、傲慢な利用者になってないかとか、そういう風にはなりたくないけど、でもやりたいこともやっぱりあるから、そういう歩みよりはどこまで出来るかなとか。
ヘルパーさんはパートナーというか、生活を支えてくれてるんで、いなかったら生活が成り立たない。だから、どこまで上手くヘルパーさんと付き合っていくかとか。

(海老原)
そういう葛藤があると。あるよね。やっぱりいてくれなきゃ何も出来ない訳で。「もうあんたんとこの介助やだわ」って言われていなくなっちゃったら自分の命に関わることだから、どうしても弱い立場にいるんだよね。

(金子)
そうそう。

(海老原)
こっちが先に妥協しなきゃいけない。「じゃあいいよ」って言わざるをえない立場にいる中で、どう自分の理想の生活を組み立てていくかっていうことだよね。でもうらちゃん夜中に突然散歩に行った時、ヘルパーさん外出介助したことない人だったでしょ。出来たじゃん。「大丈夫だようらちゃん、落ちたら拾うから」みたいな感じで行ったもんね(笑)。
あの時すごく印象に残ったのが、その時入ってたヘルパーさんが「うらちゃんがそんな思いがあることを知らなかったよ」と。「言ってくれたら自分もっと協力するのに」って言ってたでしょ。自分の身体を人質に取られてる感があって、段々言えなくなってるんだよね。どこまで言ったらいいかも分んないし。そこが難しいとこだけどちょっとずつ言って、伝えて、散歩したい時に散歩するって、あたり前のことじゃないですか。ちょっと疲れたから夜風に当たってこようかなとか、気分転換にコンビニでアイス買おうかなとか、誰もが普通にやることなんだけど、そういうことさえ躊躇せざるを得ない生活なんだと。
・・・大変だなあ。うふふふ。あと何年掛かるかなあ。でも味方についてくれる人がどんどん増えていくといいね。ちょっと東大和と世田谷とめっちゃ遠いんだけど、応援してるし、なんかあったらまた遊びに行くよ。

(金子)
うん。なんか、つくっておきます。

(海老原)
そうそう、うらちゃん全部ご飯作ってくれて、うちが嚥下障害ひどくなったからって言ってすごく飲み込みやすいメニューを揃えてくれて、優しい子なんです。ヘルパー募集中(笑)。うらちゃん最後に言い残しておきたいことありますか?

(金子)
え。だ、大丈夫です(笑)。

(海老原)
大丈夫(笑)。金子ゆかりさんでした(拍手)。

以上

(要点採録/文責 宍戸大裕)

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