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【報告】劇場トーク「しあわせ生活のみつけかた〜難病ALSの私〜」(Part.20)

劇場トークのご報告、第20弾をお届けします。

【7月30日(土)】
テーマ;「しあわせ生活のみつけかた〜難病ALSの私〜」
ゲスト;酒井ひとみさん(日本ALS協議会理事)、海老原宏美さん(出演者)

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(海老原)
みなさんこんにちは。今日はお忙しい中お集まりいただきまして、本当にありがとうございます。映画に出演させていただきました、海老原宏美と申します(拍手)。
今日はトーク最終日ということで、スペシャルゲストの酒井ひとみさんにお越し頂きました。20分ぐらいしか時間がないんですけれども、酒井さんとお話させて頂ければと思っております。
ただちょっとその前にですね、先日相模原で起こりました大変な事件がありましたね。19人の尊い命が亡くなられたということがありましたので、黙祷を捧げられたらと思っております。ご協力頂ければと思います。それでは、黙祷。
-黙祷-
ありがとうございます。それではトークを始めます。今日お越し頂きましたのは、江戸川区にお住まいの酒井ひとみさんです。映画に出てきた渡部さんと同じALSとともに生きてらっしゃる方です。まず最初に酒井さんに、自己紹介をお願いします。

(酒井さんの介助者1)
-酒井さんの口文字を読み取る-
あ、か、さ、た、な・・・・・・
はじめまして、江戸川区から来ました酒井ひとみです。ここからは、ヘルパーに簡単な自己紹介をしてもらいます。

(酒井ひとみさんの介助者2)
-文章を読み上げる-
2007年6月頃にALSを発症。「ALSはきっといつか治る病気だ」という強い意志を持ちながら、ALSの理解を深めるための啓発活動に取り組んでいます。仕事や子育てをしながら夫と二人の子供と楽しく生活をしています。

(海老原)
はい、どうもありがとうございます。先日、酒井さんのお家に初めて伺って、今日のトークの打合せをさせて頂いたんですね。それで今見て頂いたように、渡部さんと同じ口文字コミュニケーションで会話を沢山して頂いて、1時間ぐらい、色んなおしゃべりさせて頂きました。今回のトークについても、事前に「こういうことをお聞きしたいんです」っていうことをお伝えして、全部口文字でやってると本当に3時間ぐらいかかっちゃうので、「じゃあここは事前に書いておいてヘルパーさんにお願いします」とか、「ここは自分で口文字でやります」っていうことを、打合せてきたんですね。
それで、いくつかお聞きしたいなと思って事前に質問でお願いしていたことは、「今、酒井さんがどんな生活をしているのかってことをご紹介ください」と伝えました。そこをお答え頂けますか?

(酒井さんの介助者2)
-文章を読み上げる-
主人と私が暗黙の了解で、自宅にいる方が家事をやっています。主人がいない時は、午前中のうちに夕飯のメニューを考え、ヘルパーに指示してヘルパー自身で空いた時間を計算して動いてもらっています。その他、私の身の回りのことが最優先なので、一日にやってほしいことは朝までに考え、それを頭に入れながら食事のメニューを考えたり。
うちは「調理実習でしか調理したことがありません」という学生が多いので、その子にあったレベルのメニューを考えています。あと、こう見えて意外と仕事や遊びで外出することが多く、そういう日は大体3時間前から用意が始まります。今日も実は8時半から外出をしてきたので、5時から準備が始まっています。眠剤を入れているので、私自身、5時に起きることはほとんどありませんが、私が起きるとなかなか準備が進まないから、準備に関わる者は寝ててほしいと思っているようです。

(海老原)
ありがとうございます。今日、映画も観に来てくださるということで。…朝5時ですか!5時って私、爆睡してる時間帯ですよ。わざわざありがとうございました。やっぱりすごく時間かかりますよね、すべてのことにね。ちょっと遊びに行こうとか、ちょっと出かけようっていうこともすごく大変だと思うんですけど、でも本当に、外に活発に出ていろんな活動をされていらっしゃるなぁ、という印象です。
この映画を作るきっかけになった尊厳死法制化のセミナーとか勉強会というところにも必ずいらっしゃるんですよね。頼もしいなぁと思っております。私とか酒井さん、それからそこにいる小田さん、あと今日は岡部宏生さんがいらしてます。すみません、突然振って。皆さん、有名な岡部さん、ご存知ですか?
この間、国会の参考人質疑の出席を断られた「あの方」ですね(笑)。カッコいいですよね、ダンディーで。今日はありがとうございます。
みんな呼吸器仲間で生きてるんですけど、良く言われるのが、ALSの方がすごく進行が早くてですね。体がどんどん動かなくなっていくスピードと、そこについていく自分の気持ちが、本当になかなか追いつけなくて、すごくしんどいと。
それで女性がALSになると、介護をする旦那さんが仕事を辞めないといけないとか、家族が犠牲になる率が高いので、ALSの女性の多くが呼吸器をつけないで亡くなることを選ばれると言われているんですね。その中で酒井さんは呼吸器をつける選択をして、子育てをされて家事もされてご飯も作って、ということをされているんですが、酒井さん、その呼吸器をつけようって思われたきっかけというか、何が一番のモチベーションになって、呼吸器をつけて生きていこうって思われたんですか?

(酒井さんの介助者2)
-文章を読み上げる-
まずは、もし呼吸器をつけなければ、子供の成長を見届けることが出来ないのが心残りだったので、つけることに決めました。でも、あんなにママとべったりだった子供たちが、その2~3年後には殆ど自分でできるようになっていて、そこまで早く成長しなくていいのにと寂しく思ったのを憶えています。とは言っても、実は一人で早く死んでいくことがただ恐怖でしかなかった、というただの意気地なしで、ここでこうして皆さんにお会いしているというダメな人間です。

(海老原)
全然ダメな人間ではないと思います。お母さんが生きていてくれること、奥さんが生きていてくれることは、家族にとってすごく大きな力になると思いますよね。皆さんやっぱりこの、口文字コミュニケーションをナマでご覧になると「お~」ってなるんですね。

(酒井さんの介助者2)
-文章を読み上げる-
この口文字は、ALS協会長の岡部さんのお宅に行った時に初めて見ました。この時、すでに気管切開が決まっていた私は、「この先どのようにコミュニケーションをとっていくんだろう」と不安しかなかったので、岡部さんが口文字でヘルパーさんと普通に話しているのを主人と見て、「これだ」と二人で一筋の光を見たように思いました。

(海老原)
実際に読んでいくのって結構難しいと思うし、口文字を出してる方も「今、何文字目出したんだっけ」って忘れちゃったりしないのかなって、すごいなぁと思うんですね。ヘルパーさんたちに、感想を。どれぐらいで習得できました?飯田さんの方がベテランなのかしら。

(酒井さんの介助者1)
私は、2、3日だと思います。

(海老原)
2、3日!え~、ホントに!?

(酒井さんの介助者1)
今の方がだんだん退化していってるような気がします。昔より読み取れなくなってるような気もします。どうなんでしょう。

(海老原)
そうですか。酒井さん、2、3日でいけてました?飯田さん(笑)。

(酒井さんの介助者1)
-酒井さんの口文字を読み取る-
お、こ、そ、と、の・・・・・・
私が酒井さんに会った時は口が大きく開いてたので、それで2、3日でできたんだろうと思います。

(海老原)
なかなか口とか表情が動きにくくなってくると、瞬きとかもハッキリできなくなってくる可能性があるわけですけど、「口文字がうまくいかなくなってきたら、次はこうしようかな」とかってもう、考えたりされてるんですか?

(酒井さんの介助者1)
-酒井さんの口文字を読み取る-
あ、か、さ、た、な・・・・・・

(酒井さんの介助者2)
-読み取った文章を読み上げる-
私は瞬きがしづらいので、そこは合図を変えたり、あとは口文字だけど口を使わないでいける、タテで読んでその後にヨコに読んでいく方法でいこうと考えています。

(海老原)
なるほど。なんかもう、いつも先のこと先のことを少しずつ考えないと、準備がね、間に合わないですもんね。岡部さんから口文字伝授されて、すごく光が見えたって仰ってますけど、伝授した方はどんな感じでした?

(岡部宏生さんの介助者)
僕は、「呼吸器をつけても大丈夫」と無責任に言って良かったと思います(一同笑)。

(海老原)
ありがとうございます。そういう先人たちの存在がすごく必要と思います。やってみなければ分かんないこと、いっぱいありますからね。
最後に酒井さんに、事件を受けてっていうこともあるんですけど、「世の中には重度障害者なんていなくていいんだ」「生きてるのは可哀相なだけだし、国にとって邪魔な存在だ」っていう風に思ってる人もまだ沢山いることが分かったわけですけど、酒井さんご自身生きていて、尊厳を持って生きるっていうのは、どういうことだと思います?

(酒井さんの介助者2)
-文章を読み上げる-
尊厳を持って生きるとは、人間らしく生きることだと思っているので、相手のことも思いやり、お互い意見を述べるのに相手に恐怖心を与えず、普通に人間として生きていくことだと思っています。私は病気になる前は、そんなことも考えたことがありませんでしたが、尊厳ということは自分の一言一言にも実はとても責任のある言葉なのでは、と考えています。

(海老原)
ありがとうございます。酒井さん、何か宣伝が。

(酒井さんの介助者2)
-文章を読み上げる-
「宇宙兄弟」というアニメの作者、小山宙哉さんのホームページのコラムに酒井さんのエッセーが連載されています。合わせて「cakes」というページにも載っていますので、ぜひ皆様、読んでみてください。「cakes」のスペルはc,a,k,e,sです。よろしくお願いします。

(海老原)
今日はどうもありがとうございました。酒井ひとみさんでした(拍手)。

以上

(要点採録/文責 入間川仁)

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